-子宮内膜症のロイコトリエン拮抗薬(きっこうやく)を使った治療法-


子宮内膜症のロイコトリエン拮抗薬(きっこうやく)を使った治療法

子宮内膜症の原因

子宮内膜症は、卵巣や腹膜など体内の様々な場所に、子宮の内膜に似た組織ができる病気です。悪性ではないですが、ホルモンに反応して月経の度に大量に出血するなどし、強い月経痛や性交痛を引き起こします。

国内で年間の受診患者は約12万人と推計され、不妊の原因の一つでもあります。20―30歳代に多く、若い女性にとって深刻な病気の一つです。

はっきりした原因はわかりませんが、これまではホルモン剤で人工的に閉経状態にしたり、経口避妊薬で妊娠時に似た状態を作るなど、いずれも薬で月経を止め、進行を抑える治療が主流でした。

ただし、ホルモン剤では更年期障害に似た副作用が出るうえ、いずれの薬も排卵を抑制するので、妊娠を望む患者さんには向いていません。内視鏡手術で病変を取り除く場合も、再発の可能性は消えませんでした。


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子宮内膜症のロイコトリエン拮抗薬(きっこうやく)を使った治療法

大森赤十字病院産婦人科医師の内出一郎さんと栃木臨床病理研究所長の菅又昌雄さんらは、子宮内膜症の発症にアレルギー反応が関与している可能性を動物実験で確かめました。

さらに、人間の内膜症組織を顕微鏡で詳しく調べたところ、アレルギー反応にかかわる「肥満細胞」という特殊な細胞が異常に増えていることを発見しました。

詳しいメカニズムは不明ですが、内出さんらは「卵管を通って月経血が逆流し、アレルギーを起こしているのではないか」と考えています。そうであれば、既存の抗アレルギー薬で症状を緩和できる可能性があります。

中でも、アレルギーを誘発する体内の物質ロイコトリエンの反応を抑える「ロイコトリエン拮抗薬」が、増えすぎた肥満細胞を消滅させる効果が高いとわかりました。

子宮内膜症患者には、花粉症やぜんそくなどのアレルギー疾患を併せ持つ人が多いいです。そこで内出さんらは、気管支ぜんそくを持つ内膜症患者約100人に、2週間―3か月間、1日1度、ロイコトリエン拮抗薬を服用してもらいました。その結果、約8割の人で月経痛の改善や月経血量の正常化がみられました。

服用後に内膜症の手術を行うと、組織がはがれやすく、手術が容易なうえ、出血もわずかで、手術時間を短縮できました。服用後、半年―1年で妊娠した人が次々に出ており、内出さんは「妊娠を望む患者に適している」と話しています。

ロイコトリエン拮抗薬は、ぜんそく発作を予防する薬として数年前から使われ始めました。内膜症治療の場合、患者は毎日、錠剤を飲みます。ぜんそく薬としては保険がきき、3割負担の場合の薬代は1か月約3000円です。

ぜんそく症状のない内膜症患者にも処方できますが、その場合は原則として保険がききません。副作用は少なく、胃がもたれやすくなる程度です。

内膜症に効果が出てくれば、医師と話し合って服用を止めることもできます。まだ始まったばかりの治療で、有効性の確認にはさらに大規模な調査が必要ですが、内出さんは「薬の処方が可能かどうか、近くの産婦人科で相談してほしい」と話しています。


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大森赤十字病院

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